国内初の農産品紹介ポータルサイト!?「みんなの青果」はこうして生まれた!

2021年10月にオープンした農産品紹介ポータルサイト「みんなの青果」。

野菜・青果に関する情報を消費者・仲卸に対して幅広く提供するとともに、生産者は気軽にPRできる場としても使えるサイトであり、「消費者・仲卸・生産者」の関係者全てがハッピーになることを目指している。

立ち上げたのは、豊洲市場の青果仲卸「丸川」に勤務する増山健司さん。どのような思いで取り組んだのか、豊洲市場内の飲食店でじっくりと話を聞いてみると、サイトを見ただけではわからない“熱い想い”が溢れてきた――。

リクルートでの修行を経て、豊洲市場の「青果仲卸」へ

――まずは簡単に、増山さんの経歴を教えてください。

慶應義塾大学を2004年に卒業し、リクルートに入社しました。

ゆくゆくは父が社長をやっている築地市場(当時)の青果仲卸の会社に入ろうと思っていたのですが、リクルートが新卒3年限定の契約社員を募集開始したので“修行”と思って申し込んだんです。

担当したのは当時フリーペーパーだった「ホットペッパー」で、赤坂六本木版の創刊立ち上げに携わりました。広告を出稿してもらうために飲食店に毎日飛び込み営業をして、申し込みが取れたら広告の原稿を作成するところまでやっていました。まぁ売れない営業マンで大変でした(笑)。

――リクルートには何年間在籍していたんですか?

7年半です。

長くいればそれなりに実績を積めることもあって、営業チームを任されたり、大手飲食チェーン店の窓口を担当して全国表彰をもらったり、自分のチームが表彰されたりと、大変なりに楽しくやっていました。忘年会での活躍も多かったんですが(笑)。

そして最後の1年はちょっと特殊なミッションを任されました。ホットペッパー未展開の県、全てに立ち上げを行う部署で商品・営業企画を担当しました。結果、当初の“3年の修行”の予定からは倍以上にずれ込みましたが、2012年に築地市場の家業に入り、現在に至ります。

――家業である青果仲卸の仕事に就いてから約10年になるんですね。どのような仕事をされてきたんですか?

青果仲卸の仕事は言ってみれば「野菜の商社」ですね。

毎日、豊洲市場に入荷する野菜をスーパーや八百屋さん、飲食店、学校給食などに販売する仕事をしているわけですが、仲卸はただ右から左へと流しているわけではありません。

それは、市場では野菜の入荷状況で品物の値段が変わる「相場」があるからです。スーパーなどへの出荷価格は事前に決まっているケースが多いので、僕らが価格・品質ともにしっかりと目利きをして、上手に仕入れをしないと、相場で損をしてしまうこともあります。

仲卸の仕事は、注文通りに良い品物をキッチリ揃えて出すのが大前提として、仕入れを通じてお野菜の安定価格と安定供給を担っていると言えると思います。また、全国の入荷品から未来のヒット商品を探して育てていく面もあり、そこは市場人の醍醐味かもしれません。

「みんなの青果」を立ち上げたのは、野菜・果物を網羅した情報サイトが「なかった」から

――そんな増山さんが最近、農産品紹介ポータルサイト「みんなの青果」を立ち上げました。これはどのようなサイトなのでしょうか?

みんなの青果
https://oyasaikudamono.com/

農家さんや農協の方に掲載費をいただいて、出荷している野菜・果物の情報を丁寧に掲載していくポータルサイトです。

産直サイトのような販売機能は設けておらず、純粋にその品がどのようなもので、どのような方が、どのような産地でつくっているのかを紹介するサイトなんです。

私の前職の仕事に絡めて言うと、「野菜・果物版のホットペッパー」、または、ぐるなび、じゃらん、ゼクシィのようなもの、と言えば伝わりやすいでしょうか。

――販売をメインにしている野菜・果物のECサイトはたくさんありますけど、そことは明確に差別化されているんですね。

はい、「みんなの青果」は情報発信に徹して、そこを継続して丁寧にやっていきたいんです。

販売できる産直ECは他にもありますから、そこが得意なところはそちらにお任せして、僕は「消費者・仲卸・生産者が必要なもの」をつくっていきたいと思っています。

――そもそも、「みんなの青果」を立ち上げた理由は何だったんですか?

「野菜・果物のポータルがなかったから」です。

僕は豊洲市場仲卸の仕事をしていますから、入荷する野菜で知らないブランドだった場合はネットで検索して調べるんですね。数年前の話になるんですが、ある産地のトマトが入ってきて箱に産地やブランド名は書いてあったんですけど、どんな商品かわからなかったのでググってみたんです。

でも、情報が1ミリも出てこなくて、びっくりしました。

――何でも情報がWebに載っている今の時代に、全くなかったと。

そうです。全く見当たりませんでした。

産地に行くと印刷物やパンフレットが結構あったり、農協や自治体、それぞれのECサイトに情報がそれぞれ載ってたりはするんですけど、最低限の情報で、深堀りされていないんですよね。なので仲卸の僕、あるいは消費者が知りたい情報は載っていなかったんです。

また、ECサイトの場合は直販する生産者が載せるから、農協に卸している生産者は載せないから、情報が網羅されていないんですね。

でも、消費者や仲卸にとってそこは関係ないので、その経験から、野菜や果物に関する情報を欲しがっている人が満足できるぐらい“全ての情報が載っているサイト”が世の中には必要だと思いました。

「仲卸の立場・知識×広告で培った戦略」で生産者を支援

――野菜・果物に関する全ての情報を網羅することが目標ということですが、 “情報の見せ方”でのこだわりはありますか?

フォーマットで綺麗に整理して、比較検討できることにこだわっています。

僕がリクルートでやっていたホットペッパーの仕事は「情報を綺麗に可視化したフォーマットで提供する」もので、そうすることでユーザーは簡単に比較検討ができるようになるんですね。

たとえば、「みんなの青果」で「トマト」で検索すると、北海道産の「あまやか」栃木県産の「ZINBO」などが出てきます。

これらがそれぞれ、バラバラなデザインのページで載っていたら見にくいですが、「商品情報」「生産者イチオシのポイント」などの項目が統一されたフォーマットで紹介することで見やすくなり、さらに野菜の深堀りした情報を得られて、比較検討できるようにしているんです。

PRが苦手な生産者もフォーマットに沿って情報を記載していけばコンテンツがつくれるので、生産者にとってもメリットがあると思いました。

――情報を知りたい消費者・仲卸だけではなく、生産者にもしっかりと寄り添っているサイトなんですね。

そうですね。

正直に言うと、僕は今の“産直”ばかりがちやほやされている現状にモヤモヤしているところがあるんですよ。「農協、市場経由のものより良いのが産直でしょ」みたいな空気がありますよね。

でも、農協の商品規格や選別基準は非常に厳しいものがあって、農協に卸している農家さんもそれをクリアするために、日々こだわって野菜や果物をつくっているんです。どっちが良いとかではありません。農協の先にも産直と同じように、懸命に働いている農家さんがいるわけですよ。さらに、流通を担う市場の人間の目利きも入るわけで。

ただ、そういう方たちはあまり自分達で発信をされていない現状があります。だから仲卸の僕がフォーマットをつくって、農産品紹介ポータルサイトをつくれば、みんなが喜ぶものができるんじゃないかと思ったんです。

――なるほど。商品ページを見てみると、「商品のこだわり」や「農園の環境について」などの項目があって、商品情報をただ載せるだけじゃなく、“背景”を伝えているところもポイントですね。

はい、いくら「おいしいですよ」と言っても、それだけではわからないことがあって、それでは買おうと思わないですよね。

だから「みんなの青果」では、なぜおいしいのか、誰が、どういうこだわりもって、どのような環境で育てたのか、といった“商品の背景”をちゃんと見せてあげることを意識しています。

その際に、たくさんのお金をかけてパンフレットにして……という方法ではなくて、低コストで、一度載せてしまえばずっとWeb上に残りますよ、というのをやりたいんです。

――「野菜・果物のデータベース」のようなイメージですね。それを野菜・果物を知り尽くしている仲卸の増山さんがやっているところに価値がある。

全体の流れを知っていますからね。

さらに言うと、リクルートで培った広告のノウハウからもあるからできるところも大きいです。

「仲卸の立場・知識×広告で培った戦略」、この掛け算ができるところが自分の強みだと思っています。

期間限定月額980円で、簡単にPR・情報更新ができる

――この記事を読んで、「うちの野菜もみんなの青果に載せたい!」と思った生産者の方がいたら、具体的にどうしたらいいですか?

こちらのご案内ページからお申込みいただければ、すぐに僕が対応します。
https://oyasaikudamono.com/products/

通常、月額1,500円(現在は期間限定980円)で、このようなページを作成しています。

こちらは北海道Jファームさんが栽培している糖度10度クラスのミニトマト「あまやか」のご紹介です。

https://oyasaikudamono.com/amayaka/

内容は、約20枚の写真と、「商品情報」「生産者イチオシのポイント」「生産者おすすめのレシピ」「商品へのこだわり」「農園の環境について」「STAFF」「ACCESS」「ラインナップ」というフォーマットになっています。

――今は期間限定980円なんですね。

はい、月額1000円ぐらいでPR・情報発信できたら、生産者さんにも喜んでもらえるかなと思って。

――コンテンツの中身は生産者側が自分でつくるスタイルですか?

ざっくりとフォーマットに沿ったテキストと写真をいただいて、それを元に「みんなの青果」編集部で作成します。

原稿を一度つくって終わりではなく、SNS連携も同じページでしているので、たとえば生産者さんのツイッターをそのページに連携しておいて、農作業の合間にでもスマホで日々ツイートしてもらえば、情報が更新されていきます。

自社でサイトをつくるよりも、手軽にPRと情報更新ができます。

――今は自社サイトを簡単につくれる時代ですが、「つくっても集客できない」という悩みを抱えているところも少なくありません。

大半の自社サイトはその農園のことを知る人ぐらいしか見られないのが現状だと思うので、難しいところがありますよね。

実際に、僕が知る生産者の方々でも「ホームページをつくりませんか?」という売り込みの電話があり、数十万円の見積もりが出てきて、その通りにつくっても、「サイトはつくったものの、誰も見ない」という現状があると聞きます。

農家さんは日々の栽培が本業で、その辺りの情報に詳しくない方も多いから、そこに頼っちゃっている生産者さんもいるんですよね。

その点、「みんなの青果」はたくさんの農園や野菜が掲載されているので、自社農園を知らない人も訪れる場所に月額980円でサクッとPRページを構築できるところが強みだと思っています。

――確かに、「一生懸命つくったけど、売り方がわからない」という生産者さんは少なくなさそうですね。

そうなんですよ。だから、いろいろな人に「みんなの青果をつくりました」という話をすると「絶対、それいいですね。農家はみんな困ってますよ」と、喜びの声をいただくんです。

さらに言えば、今後は日本の野菜・果物を輸出していく流れが増えてくると思います。そのときにネット上に日本の野菜・果物の情報が網羅されているサイトは絶対に必要になるので、そこを「みんなの青果」がつくっておきたいんです。日本語でつくっておいて、今後はそれを英訳すればいいだけですから。

日本の人口が減っている現代だからこそ、それが結果的に農家さんの収入を上げることになると思っているので、「みんなの青果」は必要だと確信しています。

「体験×野菜」「野菜とライフスタイル」が今後のキーワード
「知られざる美味しい」を伝えていく

――ちょっと話が変わりますけど、増山さんはサウナ好きで、プライベートでは熱波師もされていて、その流れで最近では「サウナトマト」や「サウナキュウリ」を出してますよね。あれ、気になります。

サウナトマトは横浜にあるスーパー銭湯おふろの国・店長の林さんの発案で、そちらのサウナ食堂で提供しています。

トマトは1種類ではなく、豊洲市場に入荷している産地の中から、時期ごとにオススメの品をセレクトしています。サウナで汗をたくさんかいたあとに水分をたっぷり含んだ冷えたトマトやキュウリを食べると、一段とおいしく感じますよね。それを狙って「サウナトマト」とネーミングしています。

結構、Twitterに載っけてくれる方も多いんですよ。

――SNSで見て、サウナを出た後にサウナトマトを食べてみたいと思いました。

サウナトマトをやってみて、気づいたことがあるんです。

それは「みんなの青果」のこれからのキーワードを「野菜×体験」「野菜とライフスタイル」にする、ということ。

ただ単に「おいしい野菜を売ってます!」と伝えるだけじゃなくて、体験とセットにして売っていきたいんです。「サウナを出た後に食べるトマトが最高」、その“体験”を売っていくイメージですね。

――面白いですね。友人が「小学校の時に入っていた園芸部で収穫したかぼちゃでつくった煮込みが人生で一番美味しかった」と言っていましたけど、確かに野菜と体験はセットで記憶に残っていることがありますね。

ありますよね、エモ体験というか。みんなそれぞれ絶対ありますよね。

僕で言うと、愛媛の絹かわなすでしょうか。夏に出回る大きなパパイヤぐらいあるナスなんですが、輪切りにしてステーキにしてポン酢で食べたら「何だこれは?」っていうぐらい美味しかった。

自分なりに基準があるんですけど「この美味しさを知らなかったのは今まで人生損してた!」って思ったんですね。そして同じように他の人に食べてもらって喜びを共有するみたいな。毎年、絹かわなすがはじまるのが楽しみになるっていうのもありますね。

――野菜を知り尽くしている仲卸の増山さんが運営する「みんなの青果」に期待するのは「その野菜をどう食べたら一番おいしいかを教えてもらう」という価値提供の部分も大きいと思います。

そうですよね。農家さんを紹介するテレビのグルメ番組などで、そこの奥さんが家の台所で作ってくれる一品がとても美味しそうじゃないですか。別に手の込んだ料理じゃないのに。

「みんなの青果」では、ああいうものも紹介したくて、商品ページには生産者さんがおすすめするレシピコーナーを入れているんです。

最近、トマト農家さんに聞いたところでは、コンビニで売っているトマトソースパスタに、切ったトマトを入れて食べるだけでもグレードアップして、とても美味しくなるそうですよ。

――そういう情報をたくさん知りたいです。「飲食店の美味しいまかない」みたいな感じですね。

生産者さんからたくさん聞いて、載せていこうと思っています。

僕が「みんなの青果」をやる目的の1つとしては、生産者さんのインタビュー記事をつくりたかったというのがあるんですよ。

会いたい人に会いに行けるのって楽しいじゃないですか。それでコンテンツにすれば、その人のファンの人達も楽しませてあげられるなんて最高ですよね。それをテキストだけじゃなくて、動画でもやっていきたいと思っています。

――「みんなの青果」を見れば、「知られざる美味しい」がたくさん知ることができる。いいですね!

「美味しい」が大事なんですよね。

僕は子供の頃から「体にいいから食べなさい」と言われるのが凄い嫌だったんですよ。

だから俺がいまの子どもたちに言いたいのは「美味しいから食べなさい」ってことなんです。

美味しいものは一緒に食べたい。一緒に美味しいって言いたい。栄養も大事なんだけど、「美味しい・楽しい・そしてぐっすり寝る」。それが一番ですよね。

今後も「みんなの青果」では「美味しい」の部分の情報をたくさん届けていきたいと思っています。

取材・文 廣田喜昭(代官山ブックス)

増山健司(ますやま けんじ)
2004年〜リクルートホットペッパー編集部にてフリーペーパー、Webメディアの営業、制作を行う。
2010年〜2011年 ホットペッパー新エリアプロジェクト担当
2012年〜築地市場青果仲卸勤務
2018年 豊洲市場への移転
2021年10月 農産品ポータルサイト「みんなの青果」立ち上げ

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