「農業技術10大ニュース」の選定について
この1年間に新聞記事となった民間企業、大学、公立試験研究機関及び国立研究開発法人の農林水産研究成果のうち、内容に優れるとともに社会的関心が高いと考えられる成果10課題を農業技術クラブ(農業関係専門紙・誌など29社加盟)の加盟会員による投票を得て選定しました。
TOPIC1 サツマイモ基腐病をすばやく診断!-病原菌を最短約1日で検出・同定-
国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構(以下「農研機構」という。)は、新型コロナウイルスの検出にも使われるリアルタイムPCR法を用いて、サツマイモ基腐病菌を最短約1日で検出・同定する技術を開発。従来の2週間より早期の診断が可能となったことで被害のまん延防止対策として期待されます。
TOPIC2 2万円で自作!IoT監視システム-自宅からスマホでハウスの見回り-
農研機構は、2万円ほどで自作でき、ハウス内の温度等をスマートフォンで確認できるシステムを開発。メッセージアプリを使い、希望の時刻や間隔など、生産者ニーズに合わせてハウス内の情報取得が可能。ハウスの管理のために足を運ぶ頻度が減り、見回り時間を削減できます。
TOPIC3 タマネギ直播栽培の5作業が1回で-安定生産と作業性を両立する作業機を開発-
農研機構、JA全農、株式会社クボタは、タマネギ直播栽培の作業機を開発。トラクタに装着して、畝立て・溝底播種・直下施肥のほか、耕うんや農薬散布を加えた5作業を同時に行うことが可能。慣行の苗移植体系より労働時間を24%削減しつつ、直播栽培の初期生育が改善できます。
TOPIC4 アミノ酸バランス改善飼料で牛排せつ物由来の温室効果ガスを削減-地球環境に配慮した畜産の実現に期待-
農研機構と栃木県は、アミノ酸バランスを改善した飼料を肉用牛に給与することで、排せつ物から発生する温室効果ガス(一酸化二窒素)を半減できることを明らかにしました。牛の増体や肉質への影響はなく、地球環境に配慮した畜産の実現が期待されます。
TOPIC5 2つの腕でロボットが果実を収穫-果実をAI認識、人と同じ速度で作業-
株式会社デンソー、立命館大学、農研機構は、V字樹形のリンゴ、ニホンナシ、セイヨウナシを対象とした果実収穫ロボットのプロトタイプを開発。果実をAIで認識し、2本のロボットアームによって、人と同等の作業スピード(11秒/個)で収穫が可能。収穫作業の軽労化が期待されます。
TOPIC6 イネの生育と収穫を増加させる技術開発に成功-食料増産と二酸化炭素や肥料の削減に期待-
名古屋大学などの研究グループは、イネの葉や根にある特定の遺伝子の働きを高め、光合成の活性化と養分の吸収効率を同時に上げ、収量を3割増加させることに成功。生産性向上による食料増産と肥料削減が期待されます。
TOPIC7 地球にやさしいコムギ新品種を開発-窒素肥料を減らしても収量維持-
国立研究開発法人国際農林水産業研究センターなどの研究グループは、多収コムギ品種に野生近縁種の高い生物的硝化抑制(BNI)能を交配によって付与し、窒素肥料を6割減らしても、通常のコムギと同じ生産性を維持するBNI 強化コムギを開発。窒素肥料の低減とともに、温室効果ガスの削減や水質汚染の低減が期待されます。
TOPIC8 圃場の病害虫をスマホで診断!-AIを利用した画像診断技術を開発-
農研機構などの研究グループは、精度の高いAI病害虫画像判別器の開発に成功。トマトなど4作物の病害虫の画像を基に病害虫名を診断する病害画像診断技術に基づくシステムを先行的に公開。システム利用者の画像を蓄積することで、さらに診断精度を高められることが期待され、病害虫防除の対策に貢献できます。
TOPIC9 世界の穀物収量をいち早く予測-既存サービスよりも1~6ヶ月早く予測情報を提供-
農研機構とAPEC気候センターは、全世界を対象とした穀物の収量予測手法を開発。本手法の収量予測では、既存予測サービスよりも1~6ヶ月早く、収量の概況を把握できることを明らかにしました。予測情報の公表により、食料の投機的な価格高騰を抑制するなど公益的な効果が期待されます。
TOPIC10 3Dカメラとスマートグラスを用いて豚の体重を瞬時に推定-豚の体重が見えるメガネ-
宮崎大学は、頭に装着した3Dカメラとスマートグラスを用いて豚を見るだけで体重を推定することが可能な装置を開発。3Dカメラで得られた豚の体形データに枝肉標準モデルをAIがフィッティングし、体重と枝肉重量をスマートグラスに表示。作業の効率化と収益向上が期待されます。
編集部より
青果のトピックスでいうと1・2・3・4・8でしょうか。
中でもハウスIoT管理を2万円で出来るTOPIC2は凄いコスパですね。試しにやってみようという方には朗報だと思います。